60代おひとり様、元幹細胞研究者で起業家の「ねこのミー」です。
日々の暮らしを自分にとって最も心地よい「定常状態」に調律すること。 それが、半分リタイアした私の、今のささやかな自炊実験のテーマです。
実は最近、ワインの資格WSET Level3の教室でお知り合いになった料理研究家の高山かづえさんと一緒に、とあるワクワクするプロジェクトを動かしています。
私の会社で進めているワインの成分分析と、かづえさんのプロの料理、そしてワインショップ・トンシェルトンの店主・松本さんの知恵を掛け合わせ、お互いのポテンシャルを最大化する「ワインと家庭料理のマリアージュ」の検証という名の、美味しいお仕事です。
その検証の席で、かづえさんが出してくれたおつまみがありました。 それが、スパイシーで香り豊かな「中華枝豆」。
一口食べた瞬間、脳の報酬系が強烈に刺激されました。
八角と五香粉(ウーシャンフェン)のエキゾチックなアロマが鼻腔を抜け、塩気と枝豆の甘みが絶妙なバランスで口の中に広がる。
「美味しい……! これ、家でも絶対に再現したい!」
それからというもの、あの味が忘れられず、自宅のキッチンで何度か自分で作ってみました。 しかし、どうにも同じような味になりません。 何かが違う。成分の抽出バランスなのか、それとも前処理の不足なのか……。
いろいろチャレンジしてもあの味にならないので、ついに降参して、かづえさんに直接その「最適化レシピ」を聞きました。
料理界の「定量化」に潜む科学
かづえさんに教えていただいたレシピを読み解くと、そこには私の再現エラーを解決する、極めてロジカルなポイントが散りばめられていました。
まず、最大の鍵は、「茹でる前に、枝豆の両端をハサミで切り落とす」こと。
これです。
私は今まで、枝豆をそのまま丸ごと茹でていました。 しかし、両端を切り落とすことで、枝豆の細胞壁の間に直接、塩分とスパイスの芳香成分が染み込むための「拡散経路」が確保されるわけです。
なるほど~!理に適っています。
さらに、驚いたのがスパイスの配合指示でした。
【かづえさんの中華枝豆・仕込みプロトコル】
- 枝豆の両端をハサミで切る。
- 塩(大さじ1)で枝豆をしっかりともみ、しばらく置いてなじませる。
- フライパンに、八角1粒、五香粉(ウーシャンフェン)を「少々」。
- しょうが(ひとかけ)を加える。
ここで、料理本でよく見かける「少々」という不確定な変数について、少し話が逸れますが、最近とても面白い事実を知りました。
理系人間にとって、料理の「適量」や「少々」といった曖昧な言葉は、実験の再現性を著しく下げる表現に感じられます。 ところが、プロの料理界において、この「少々」には、れっきとした定量的な定義が存在したのです。
なんと、「少々」とは、親指・人差し指・中指の3本の指先でつまんだ量であり、それは重さにして「約1g」を指すのだそうです。
「適当にパラパラ」ではなく、人間の手のセンサーを用いた「約1gの計量」。
へぇ~!この事実を知った瞬間、私の脳はスッキリしました。
なるほど、このレシピは、これほど美しく定量化されたレシピだったんですね。
抽出実験と想定外の「エラー」
さっそく、計量した試薬(スパイス)と塩もみした枝豆をフライパンにセットします。

*写真では、お塩がかかってますが、実は、これは不要でした(;^_^A
レシピでは、「水を1カップ注ぎ、蓋をして4分茹でる」となっていました。
しかし、4分経ったところで一粒サンプリングして味見をしてみたところ、私には少々歯ごたえが堅く感じられました。
「私には、あと1分の加熱が必要」 そう判断し、茹で時間を5分に延長いたしました。
ところが、ここで別のエラー因子が発生。
わずか1分の延長により、フライパン内の水分がほぼ完璧に蒸発して、飛んでしまったのです。
お皿に盛り付けると、香りは素晴らしいものの、どこか乾燥した仕上がりに。
味見してみました。「おお、でも美味しい!」

スパイスのパンチは十分に効いていますが、私がかづえさんのところでいただいた、あの「中までしっとりと味が染み渡った、ジューシーな中華枝豆」とは、何かが決定的に違います。
ここでよくよく思い出してみれば、私がかづえさんのお宅でいただいたのは、かづえさんが事前に作って持ってきてくださり、時間をかけてじっくりスパイスが浸透したものでした。
つまり、茹で上がった直後の熱々を食べるのではなく、水分が残った状態で「冷却しながら、じっくりと成分を移行させるプロセス」こそが、あの劇的な美味しさを生み出す真のトリガーだったのではないだろうか?
「それなら、このまま密閉容器に収めて、冷蔵庫で一晩、冷却プロセスを試してみよう」
そうして、ジップロックコンテナに収めた枝豆を冷蔵庫の奥へと退避させました。
翌日の劇的な「アウトカム」
翌日の夜。 仕事を一区切りさせ、冷蔵庫からキンキンに冷えたコンテナを取り出します。

一粒、口に放り込んで、皮から身を押し出した瞬間……。
「きゃー、美味しい!!」
思わずキッチンで小さな叫び声をあげてしまいました。
昨日とは全くの別物です。
冷やされる過程で、浸透圧勾配に従って八角と五香粉のアロマが枝豆の芯にまで完璧に染み渡っています。
これです、これ!
私が恋い焦がれていた「高山かづえの中華枝豆」の完全なる再現系が、ここに構築されました。
でも、ちょっと塩分が濃すぎしました。フライパンで茹でる時に、私がレシピにはなかった塩を足してしまったのです。ちゃんとレシピ通り作れよー!
「あー! ビールが飲みたい!」
このエキゾチックなスパイスには、間違いなく、キンキンに冷えたビールが至高のペアリングです。
しかし、ここで我が家のセラー事情という、不都合な真実(現実)に突き当たります。
現在、私の手元には、分析事業のためにテイスティングしなければならない、国内外の魅力的なワインのボトルが山のようにたまっています。 おひとり様の胃袋のキャパシティは1つ。
高LDLコレステロール値をAIに伴走してもらいながら管理している身としては、ワインをテイスティングした上で、さらにビールまで流し込むのは、完全なる「過剰摂取」となり、健康管理プロトコルにおける重大なエラーを招きます。
悲しいかな、我が家の冷蔵庫にビールのストックはゼロ。
「これほどの傑作おつまみがあるのに、ビールがないなんて……」
贅沢な悩みに身をよじらせながら、私は大人しく、テイスティング用のワインの栓を抜くのでした。
でも、このスパイシーな中華枝豆、実は赤ワインと最高のシナジーを発揮してくれるんです!
詳しくは、こちらを読んでいただけると、うれしいです↓↓↓
【マダム・ミーの成分カルテ】餃子とカベルネの究極の相性:豚肉のL-プロリンがワインに魔法をかける!究極のマリアージュ検証|nekonomie_cellmimic
結び:暮らしの舵を自分で握る幸せ
キッチンで私が中華枝豆をつまみながら、ロジカルなマリアージュに一人悦に入っていると、背後から「みゅう〜」と、私の共同パートナー・愛猫レアちゃんが近づいてきました。
スパイスの強い香りに、不審そうに鼻先を「ふん」と鳴らすと、お気に入りの窓辺へとトコトコ去っていきました。 猫にとっては、八角や五香粉のアロマは少々刺激が強すぎたようです。
リタイアして起業し、日々のスケジュールは劇ジョブを極めることもありますが、自分のための時間は、すべて自分の裁量で調律できるようになりました。
スーパーで見つけた枝豆ひとつから、プロの知恵を借り、科学的なアプローチで自分史上最高のおつまみを構築すること。 世の中の目まぐるしいスピードに無理に合わせるのではなく、自分の「美味しい」と感じる価値観を大切にしながら、暮らしの舵を自分の手でしっかりと握ること。
その小さな手仕事のプロトコルが、私のQOLを、今夜も力強く支えてくれています。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


